研究代表者は、これまでフェノールオキシダーゼインヒビター(POI)に着目してその立体構造も含めた機能構造を明らかにし、またその情報を元に作成した分子プローブを用い活性型フェノールオキシダーゼ(PO)の機能構造解析を進めてきたが、イエバエ蛹中に見出されるPOIは活性型PO総量と比較し少量であり、これはPOI以外のPO阻害因子の存在を示している。本研究においては、POIとは異なる真の新規PO活性制御因子(以下PORと略す)の単離・同定を行なうと共に、その生体内における役割を明らかにする事を目的として行った。 まず初年度である平成14年度には、イエバエ蛹からのPORの単離・精製とその一次構造解析を試みた。PORの精製は、既に作成した活性型PO固定化アフィニティーカラムを中心に各種クロマトグラフィーを駆使する事によって行なったが、類似蛋白質の混在により完全に精製することは困難であった。 平成15年度においては、PORの効率的精製とその生理的意義の理解を目的として、卵から成虫に至るまでのライフサイクルに沿ったPORの活性発現変化を、前年度確立した部分精製法を用いて追跡した。興味深いことにPOR活性はイエバエの生長に沿って劇的に変化し、ゲルろ過、MALDI-TOF質量分析、POに対する阻害様式の違いから、少なくとも3種類以上の異なるPOR活性が、それぞれ異なった形態変化の起こる時期特異的に存在することが明らかとなり、興味深い役割が示唆された。そこでこれらの活性発現が、最大となる3つの時期に焦点をあて、それぞれの蛋白質を精製し、その一次構造解析を進め、現在ほぼ解析が終了しつつある段階である。
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