研究概要 |
本研究は、糖尿病時やその予備的な段階で認められる生体内の酸化ストレス亢進が肝臓での糖代謝調節機能に与える影響を個体レベル、細胞レベルで明らかにすることを目的としている。前年度,酸化ストレスの誘導が肝臓での食後のインスリン応答低下や空腹時の糖新生系酵素の遺伝子発現を促す可能性があることを示した。本年度は食品性抗酸化物質による前述の現象に対する改善効果を,ストレプトゾトシン投与糖尿病モデルラットを用いて検討した。その結果,抗酸化物質としてタウリン添加食を摂取した場合,対照に比べ,血糖上昇の抑制,ストレス応答性シグナル因子の一つであるp38MAPkinase活性上昇の抑制を認めた。このとき腎臓の糖新生系酵素の一つであるG6Pase遺伝子の発現上昇に抑制が見られた。 またin vivoで酸化ストレス負荷した際に見られた糖新生系酵素の発現誘導は,酸化ストレスが直接の要因となっているのか,それとも内分泌因子の変化などを介した間接的な現象であるのかを明らかにするために,細胞系を用いて糖新生系酵素の発現誘導に酸化ストレスが直接与える影響とその発現誘導に関わるシグナル伝達系の解析を試みた。ラット肝臓由来細胞に酸化ストレスを負荷したところ,糖新生の律速酵素であるPEPCKとG6Paseの遺伝子発現量の上昇が認められ,その上昇は細胞透過性の抗酸化薬剤の添加により抑制された。糖新生系酵素の遺伝子発現誘導に関与しているシグナル伝達系を明らかにするために,ストレス応答性シグナル因子の阻害剤を用いて解析したところ,酸化ストレスによる遺伝子発現にはp38MAPkinaseが関与していることが明らかとなった。
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