研究概要 |
分岐鎖アミノ酸のロイシンは翻訳開始因子(eIF)4F複合体形成を増加させることで骨格筋と肝臓の翻訳開始を刺激することが知られている。また、トリプトファンは肝臓の翻訳開始を刺激することがポリソームの会合の解析結果から示されたが、翻訳開始段階に対する作用機構は未だ解明されていない。そこで、トリプトファンが骨格筋と肝臓におけるeIF4F複合体形成を刺激する能力を有するかどうか検討することを目的として実験を行った。Wistar系雄ラット(5週齢)を18時間の絶食とした後,L-トリプトファンを体重100gあたり135mg経口投与し、投与1時間後に屠殺して肝臓、骨格筋(腓腹筋)のeIF4EおよびeIF4E結合タンパク質1(4E-BP1)のリン酸化状態、eIF4Eと結合した4E-BP1およびeIF4Gをイムノブロット法を用いて解析した。肝臓ではトリプトファン投与で4E-BP1のリン酸化が増加し、結果としてeIF4Eの4E-BP1との結合が減少するとともにeIF4Gとの結合が増加してeIF4F複合体の形成が刺激された。一方、骨格筋ではトリプトファン投与によるこれらの因子の変化は見られなかった。eIF4Eのリン酸化状態はどちらの組織においてもトリプトファン投与により変化しなかった。以上の結果から、トリプトファンは肝臓においてeIF4F複合体形成におけるeIF4Eの利用性を調整することで翻訳開始段階を刺激することが明らかになった。また、トリプトファンは骨格筋のeIF4F複合体形成には影響を与えないことが示された。
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