研究概要 |
転写調節因子GATA-1とPU.1は各々赤血球系列、単球系列の細胞分化に関わり、GATA-1はPU.1の、PU.1はGATA-1の機能を阻害する。我々はマスト細胞においてGATA-1とPU.1がFc・RI(High affinity IgE receptor)α鎖の細胞特異的遺伝子発現に協調的に機能することを発見した(J.Immunol.168:4546-4552,2002)。また、Fc・RIβ鎖プロモーター解析から、GATA-1やOct-1がその活性化に関与することを明らかにした(J.Immunol.170:334-340,2003;Int.Immunol.15:in press,2003)。Fc・RIα、β両プロモーターをGATA-1が活性化したことから、GATA-1発現レベルがFc・RI発現に及ぼす影響を調べるため、GATA-1遺伝子変異マウス由来マスト細胞の解析を行った。GATA-1ノックダウン(筑波大学山本雅之教授より供与)ヘテロおよび野生型雌マウスより採取した骨髄細胞より調製したマスト細胞のFc・RI発現を調べ、へテロ由来細胞上の同受容体の発現と、その機能である抗原特異的IgEを介した細胞活性化反応が抑制されており、これがα鎖、β鎖の転写抑制によるものであることを確認した。ヘテロ由来細胞ではGATA-1をコードするX染色体のランダムな不活化によると思われる程度の異なるGATA-1発現抑制が認められ、これがFc・RIの発現・機能抑制の程度と合致していた。一方、マウス骨髄由来細胞にレトロウィルスを用いてPU.1を過剰発現させた結果、マスト細胞への分化が抑制され樹状細胞様の単球系細胞へ分化することが明らかとなった。また、Fc・RIα鎖遺伝子上流に発見したもう一つのプロモーターがIL-4誘導性である可能性を示した(J.Immunol.in press,2003)。
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