本研究では畜肉より低温性Pseudomonas属細菌を分離し、表現性状、化学分類学的性状、DNA類似度、16S rDNA塩基配列に基づく系統関係から正確で迅速な同定法の確立を行った。 昨年度は畜肉より菌株を分離し、代表株を57株選択した。これらに対する系統解析の結果、すべてPseudomonas属に属していた。次に、代表株および基準株について約140項目の表現性質を調べた。この結果からInforBIOにてデンドログラムを作成した。その結果、20のフェノンが形成され、多くの分離菌株がP.fluorescensのフェノンに属していた。 本年度はこの分離株に対してDNA類似度の点から考察を行った。57株およびPseudomonas属細菌各種の基準株から常法に従い、DNA抽出および精製を行った。次に、各分離株が所属するフェノンに含まれる基準株をプローブとしてDNA-DNAハイブリダイゼーションを行った。その結果、P.fluorescensのフェノンに所属する分離株はP.fluorescensの基準株に対してDNA類似度が種の基準とされる70%は超えていないものの、30%〜65%の値であった。さらに、この基準株に対する類似度が約30%の株をいくつか選択し、さらにDNA-DNAハイブリダイゼーションを行ったところ、先の結果と同様に30〜60%の値であった。また、他のフェノンに含まれた分離株は同じフェノンに所属する基準株と高いDNA類似度を示した。以上より、P.fluorescensのフェノンに所属する菌株はDNA類似度が70%を超えないものの近縁であり、他のフェノンはDNA類似度の点からもそれぞれ独立していることが明らかとなった。DNA類似度と表現性状の関連性がみられたため、InforBIOにて各グループの分別性状を決定した。その結果、15項目の試験で同定が可能であった。
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