A.北海道大学雨龍研究林内に設定した人工裸地プロット(造成後3年日、重機による『掻き起し』施業地)における調査を継続して行った。2年目までの光・土壌・生物環境の変化と、出現する植生との相互関係はすでに明らかになっている(投稿中)。今年度は、植生の発達に伴って発現すると考えられる植物種内・種間の競争関係を解析に加えるため、1.96ha(140×140m)の調査プロットに設置された60ヶ所の調査区において、植生センサス(2回/年:高木性樹種の稚樹は個体識別)、土壌試料の採取および窒素濃度の測定を行なった。この結果に関しては、競争の効果がより顕著に表れると考えられる来年度の結果を待って解析する予定である。 B.同じ雨龍研究林内において、「掻き起し」施業後の年数が異なる複数のサイトを設定した(施業後7、16、24年)。とくに各樹種の空間的な分布特性に注目して解析を行った。7年生のサイトにおいては、種間の競争関係の傾向は明らかではなく、むしろ強い光条件からの保護効果が優勢であるとみられた。一方、16、24年生のサイトでは、主要な樹種はすべて空間的に集中して分布していた。種によって、同種の上層木(母樹)と同所的(ミズナラ)・排他的(カンバ類)または独立(トドマツ)して分布する傾向が示された。 C.「掻き起し」施業地(20-27年生)における人為的な植生管理(植栽や保育施業)の影響について調査を行った。この結果、同年代のサイトであっても、植栽や保育施業の違いによって、林床の植物種多様度及び高木の更新種稚幼樹密度に大きな差が生じることが示された。とりわけ、稚幼樹密度については植栽密度が重要であること(プラスの影響)、林床の種多様度には植物への直接的な攪乱を伴う保育施業の影響(プラス・マイナス双方)が大きいことが明らかになった。
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