研究概要 |
海岸マツ林生態系の環境修復をめざした樹木共生菌の探索とその機能解析を遂行するため、本年度は以下の主に2項目について調査・実験を行った。 1.昨年度からの継続として外生菌根菌子実体の発生調査を海岸部、内陸部の2箇所において定期的に行った。その結果、海岸部、内陸部においてそれぞれ合計3、20種の外生菌根性子実体の発生が認められ、そのうち前者ではヒメコナカブリツルタケが、後者ではクサハツ、テングツルタケ、ホウキタケ属菌の一種、アセタケ属菌5種類は本年度の調査から新たにクロマツと菌根共生している種と考えられた。 2.海岸付近の塩ストレスの高い地域に適したマツ実生苗を作出するための基礎データを得るため、異なる塩化ナトリウム濃度(0mM、20mM、50mM、200mM、500mM、1000mM区)がコツブタケ11菌株の菌糸伸長に与える影響を調査した。菌糸伸長量が最大となった処理区は11菌株とも25mMであったが,0mM区に比べて菌糸伸長量が抑制された濃度は菌株によって異なっていた。また,200mM区と500mM区では菌株によっては菌糸が伸長しなかったことから,高濃度のNaClに対しては菌株間で耐性が異なることが明らかとなった。200mMと500mMで菌糸伸長がみられた菌株は,NaCl濃度が高い土壌でも,生育する可能性が示唆された。菌糸伸長試験の結果から,25mM区で菌糸伸長量が大きく,200mMと500mM区においても菌糸の伸長がみられた2菌株は,クロマツへの接種菌株として有望と考えられた。
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