研究概要 |
土壌水を採取するための吸引圧制御型ライシメータを桐生森林水文試験地内のマツ沢流域に設置した。土壌水の採取深度は,50cmおよび100cmとした。おそよ2週間に1度の頻度で現地を訪れ,自動採水された土壌水サンプルの回収を行った。この際,林内雨,樹幹流もサンプルリングして,土壌表面にインプットされる負荷量についても計測を行った。持ち帰ったサンプル水の一部を用いて,直ちに電気伝導度とpHを計測した。またサンプル水の残りは冷暗所に保管した後,液体クロマトグラフならびにICPを用いての化学分析に供した。 2002年5月から2003年1月の計測結果より,深さ50cmで採水された浸透水の硝酸態窒素濃度が,10月以降急激に上昇して12月始めにピークとなり,その後減少することがわかった。2002年の6〜9月は例年にない小雨で,土壌が極端な乾燥状態にあった。この期間に土壌生物活性や樹木活性が弱まり,土層内に蓄積された硝酸態窒素が,その後の降雨で土層下部に流出したものと考えられた。カルシウム,マグネシウム等のカチオンの濃度は硝酸態窒素濃度と非常に高い相関を持ち,硝酸濃度の増加に追随して,土壌溶液の電気的中性を維持するように土壌コロイドから引き出されたものと推察された。深さ100cmで採水された浸透水の硝酸態窒素やカチオンの濃度は,深さ50cmの浸透水と比べてほぼ一ケ月後にピークを持つ変化を示し,溶質が下層土壌に徐々に移動していく様子が明らかとなった。 シミュレーションモデルに関しては,樹木根系による水分吸収,地表面におけるエネルギー交換と土壌中の熱の移流と伝導による移動の部分のサブルーチン開発を行った。
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