調査地・調査個体の設定 平成14年7月、九州大学北海道演習林において、イタヤカエデ、ヤマモミジ、ミズナラ、シラカンバ、ホオノキそれぞれの光環境の異なる場所に成育するサイズの異なる個体数個体について、樹冠形成の追跡調査を行うための個体識別を行った。 平成14年10月、九州大学宮崎演習林において、同様に、モミ、ツガ、北海道演習林から移植されたトドマツ、アカエゾマツの、光環境の異なる場所に成育する、サイズの異なる個体数個体について、樹冠形成の追跡調査を行うための個体識別を行った。 平成15年3月、九州大学福岡演習林の林齢130年の広葉樹二次林に、個体の追跡調査を行うための方形区を設置し、個体識別とサイズ計測を行った。 個体の樹冠内光環境の幅の計測 上述の北海道演習林宮崎演習林において識別した各個体について、個体が置かれた光環境と樹冠の形成との関係を明らかにするため、樹冠内光環境の幅、すなわち樹冠頂端の葉と樹冠内でもっとも暗い葉の受光量を、感光フィルム、光量子センサを用い計測した。また、それらの個体について、樹冠の深さ、シュートの伸長量、角度などの樹冠の形態に関わる量を計測した。 その結果、樹冠内の着葉最暗光量は種、個体サイズ、個体が置かれた光環境によって異なり、一般的に、遷移後期種、小サイズ、個体の環境が暗いほど、暗いことがわかった。 また、樹冠内の着葉最暗光量が個体の光環境(樹冠頂端の光環境)の増加に応じて増加する(すなわち樹冠内光環境の幅が広がらない)種と、あまり増加しない(すなわち樹冠内光環境の幅が広がる)種の存在が確認された。 これらの違いはそれぞれの種の更新特性、生活史に関係した樹冠の形成様式の違いによるものと思われた。
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