1.枯死直後の植物組織における内部菌相と健全組織の内生菌相の関係の解明 (1)マテバシイ当年生実生を材料に用い、健全実生の内生菌相と枯死直後の組織内部菌相の比較調査を行った。その結果、枯死直後の菌の分離頻度は健全実生に比べて著しく上昇していた。種組成としては、新たに出現した菌もあったが、大半は健全組織の内生菌と共通していた。 (2)アカマツの枝を折って樹上に放置し、枝上の枯死針葉の組織内部の菌の分離を試みた。枯死針葉においては齢によって内部菌相が異なり、一年生針葉では健全針葉の内生菌相に近かったが、当年生針葉では異なっていた。ただし、この調査では予想されたよりも菌の分離率が低く、生葉を基準に行った表面殺菌法が枯死葉では適切でない可能性も考えられた。 2.リターバッグ法による落葉分解菌群集と内生菌の関係についての調査法の確立 (1)上記の問題を踏まえ、枯死組織内部の分解菌群集の動態を調査するための方法論の確立を行った。適切な強度の表面殺菌法を確定するため、滅菌したマツ針葉断片に雑菌Penicillium sp.の菌体を塗布したものと内生菌Lophodermium sp.を感染させたものを用意し、両者に表面殺菌を行った際に前者からPenicillium sp.が分離されず、後者からLophodermium sp.が分離される殺菌強度を確定した。また、この過程で内生菌を滅菌針葉断片に感染させる方法を確立した。 (2)以上の結果を元に、鹿児島大学桜島溶岩実験林のクロマツ当年生及び一年生針葉、鹿児島大学高隈演習林のアカマツ当年生針葉を材料に、それぞれ針葉断片を無処理区、滅菌区、Lophodermium sp.感染区に分けて処理し、リターバッグに入れて桜島及び高隈に設置した。現在定期的な内部菌相のモニタリングを行っている。
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