1.リターバッグ法による落葉分解菌群集と内生菌の関係についての調査 鹿児島大学桜島溶岩実験林のクロマツ当年生及び一年生針葉、鹿児島大学高隈演習林のアカマツ当年生針葉を材料に、それぞれ針葉断片を無処理区、滅菌区、Lophodermium感染区に分けて処理し、リターバッグに入れて桜島及び高隈に設置した。設置後一年半の段階で、初期には優占していたAureobasidium sp.の分離頻度はかなり下がっており、特に高隈では全く分離されなかった。桜島においてLophodermium感染区ではAureobasidium sp.の分離項度がとりわけ低くなっており、Lophodermium sp.による初期の感染阻害の影響がこの時期でも残っていたと考えられる。一方、Lophodermium sp.は桜島、高隈ともLophodermium感染区以外の二区でも同程度分離されたが、分離頻度は20%以下と比較的低頻度であった。すなわちLophodermium sp.は生葉からの感染の継続だけでなく、落葉後も新たな感染が生じていること、しかしこの時期までには落葉菌群集の主要要素ではなくなっていることが示された。 2.内生菌Lophodermium sp.と初期落葉分解菌Aureobasidium sp.の培地上における相互作用 今回リターバッグ法での処理に用いた内生菌Lophodermium sp.とリターバッグ試料の分解初期に圧倒的な高頻度で出現した黒色真菌Aureobasidium sp.を寒天培地上で対峙培養し、両者の相互作用を調べた。その結果、2%麦芽エキス寒天培地において、Lophodermium sp.はAureobasidium sp.の成長を阻害することが明らかになり、野外で得られたデータを裏付ける結果となった。
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