1.抗アガサレジノール抗血清の認識特異性の調査 抗血清とアガサレジノール構造類似体との反応性を系統的に調査することによって、抗血清がアガサレジノールを認識する際に必要とする化学構造すなわち抗原決定基の同定を試みた。その結果、アガサレジノールの化学構造のうち、そのP-ヒドロキシ芳香核単位が変化した場合(メチル誘導体、異位置ヒドロキシ置換体)およびプロペン構造単位が変化した場合(水素化誘導体、幾何異性体)、反応性は低下し、一方、そのエタンジオール構造単位が変化した場合(アセトン化誘導体)、反応性は変化しなかった。したがって、抗原決定基として、trans-1-ヒドロキシフェニル-3-p-ヒドロキシフェニルプロペン構造単位を提唱した。 2.スギ木部組織の免疫光学顕微鏡観察 スギ木部組織切片を抗血清で処理し、組織上で抗原抗体反応を行わせることによって、アガサレジノールの分布の可視化を試みた。免疫標識は、木部組織のうち心材の放射柔細胞中に観察され、一方、軸方向柔細胞の内容物は標識されなかった。したがって、アガサレジノールの生合成には放射柔細胞が重要な役割を果たしており、心材成分の生合成に関して、柔細胞の機能の違いが示唆された。また、放射柔細胞からこれに隣接する仮道管にしみ出したと思われる物質も標識され、さらにこれらは仮道管細胞壁の細胞内腔側に沈着して存在した。以上の結果から、アガサレジノールは、放射柔細胞において生合成された後、仮道管に滲出・移動し、仮道管壁内腔側に蓄積、存在する過程が組織化学的に可視化された。
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