実際の製紙工程を考慮して、針葉樹パルプ(長繊維)と広葉樹パルプ(短繊維)を混合した系について、流動場におけるフロック(凝集体)形成機構と流動特性の関係について検討した。ガラス製の平行円板を取り付けたレオメータを用い、高速度CCDカメラによって繊維分散系中のフロックの構造変化を観察するとともに系の流動特性を測定した。ひずみ速度が大きくなると系はフロックを形成したが、さらにひずみ速度が大きくなると、これらの凝集体が消失して均一な分散状態になった。このフロックの形成および再分散の程度は、長繊維と短繊維の配合率によって変化した。また、高速度撮影した分散系の像を二次元フーリエ変換することにより、系中の繊維の平均的な配向について見積もることができた。 パルプの叩解(抄紙前に繊維に施される機械的柔軟化処理)の程度を評価するには、ろ水度の測定が行われるが、これは経験的な方法であってその物理的機構については明らかでない。そこで、より物理的意味の明確な沈降体積法を用い、パルプの叩解程度を評価した。沈降体積測定で得られたファクターは従来のろ水度測定で得られた結果と良い相関を示し、ここからろ水度測定の物理的機構について考察することができた。その結果、ろ水の過程では繊維の集合体よりもむしろ単繊維の影響が大きいことが示唆された。
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