研究概要 |
樹皮中に含有されるタンニンの酸化カップリング反応およびリグニンの酸化活性化反応による分子間結合を利用し,樹皮の自己接合を試みた。過酸化水素水に鉄イオン(硫酸鉄)を溶解させた酸化処理液を調製し,これに国内製材工場より排出されたスギ樹皮を浸漬させ,酸化処理を行なった。酸化処理終了後,水洗した樹皮を油圧式ホットプレスに組み込んだ凸凹組モールド内へ積層した後に熱圧締を行い,自己接合による成形を行なった。 酸化処理を施した樹皮は,圧締温度110〜150℃,圧締圧力20〜40kg/cm^2,および圧締時間10〜30minの比較的温和な条件によって,自己接合による成形が可能であった。このとき,樹皮をランダムに積層した場合,およびその繊維方向を配向させて積層した場合のいずれにおいても成形が可能であった。また,成形体の厚さを8mmとした場合であっても,その中心部まで強固に接合されていた。 得られた成形体の強度および耐水性を,それぞれ動的粘弾性試験および水浸漬試験によって評価した。積層状態による差異では,ランダム積層成形体は配向積層成形体よりも高い動的ヤング率と低い吸水率・厚さ膨潤率を示した。また,成形体厚さを変化させた場合には,厚さが増加するに従って動的ヤング率は上昇したが,吸水率・厚さ膨潤率はほとんど変化しなかった。さらに,圧締温度,圧締圧力および圧締時間の増加に伴って,成形体の動的ヤング率は上昇し,また吸水率・厚さ膨潤率は低下し,動的粘弾性および耐水性は向上した。
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