生物有機化学的アプローチにより着生阻害メカニズムを解明するため、付着阻害活性に関する構造-活性相関を考察し、その知見を基にして蛍光プローブ化合物を創製することによって、付着生物への付着阻害活性化合物の作用点を明らかにすることを目的とした研究を行った。 強い付着阻害活性を発現する海洋産天然物をリード化合物として、類似体の合成などにより付着阻害活性に関する構造-活性相関の考察を行った。その結果、イソニトリル基が付着阻害活性発現に重要であることが示唆された。そこで、イソニトリル基を活性基として含む蛍光プローブ化合物を創製することとした。ここで、蛍光プローブに用いる蛍光官能基について考えた場合、付着生物自身が固有の蛍光発光波長を有していることを考慮する必要があった。今回対象とした付着生物はタテジマフジツボであるが、それ自身が400〜440nm波長域の励起光照射により蛍光を発光することが報告されていた。そのため、その波長領域を除いた各種波長領域の吸収を有する蛍光官能基を用いることとした。そして、フルオレセイン、アントラセン、ピレン、アミノナフタレンなどを蛍光官能基として有するプローブ化合物を数種合成した。 合成した各種化合物についてタテジマフジツボキプリス幼生に対する付着阻害活性試験を行った。その結果、いくつかの化合物について有効な付着阻害活性が観測された。これより、今回合成した化合物は活性蛍光プローブ化合物として応用できることが示唆された。
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