付着生物に対する着生阻害メカニズムを解明するため、付着阻害活性に関する構造-活性相関の知見を基にして蛍光プローブ化合物を創製し、付着生物への付着阻害活性化合物の作用点を明らかにすることを目的とした生物有機化学的アプローチによる研究を行った。 これまでの構造-活性相関の知見より、イソニトソル基が付着阻害活性発現に重要であることが示唆されていたことから、アミノナフタレンを蛍光基として有するイソニトリル化合物を蛍光プローブとして合成した。そして、合成した蛍光プローブ化合物が、タテジマフジツボキプリス幼生に対してどのように作用するかを蛍光顕微鏡により観察した。その結果、時間が経過するにつれてキプリス幼生の特定部位の蛍光強度が明らかに増大することが観察された。次に、対照実験を目的として、イソニトリル基部分のみをアルカン、アルコールに変換した蛍光プローブ化合物を合成した。そして、タテジマフジツボキプリス幼生に対する同様の試験を行った。その結果、アルカンを有する蛍光プローブは高濃度の試験でも全くキプリス幼生の体内に取り込まれている様子は観察されず、またアルコールを有する蛍光プローブ化合物は、イソニトリル化合物と同様の部位の蛍光強度が若干は増大しているように見られたが、明らかに強度が弱く、また幼生の死亡率が増加した。 以上の結果より、イソニトリル化合物がタテジマフジツボキプリス幼生の特定部位に特異的に作用する可能性が示唆された。
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