1.クルマエビの卵黄タンパク前躯体ビテロジェニン(VTG)測定系の確立 雌エビの成熟度を正確に把握するために、間接抗原ELISA法による体液VTG測定系を検討した結果、卵巣成熟初期の個体では測定が可能であったが、成熟中期以降の個体では体液中の夾雑物により測定が困難であった。そのため高感度検出が可能なビオチン-アビジン系を導入したELISA測定系を作製した結果、検出感度が50ng/mlの高感度測定系が確立できた。 2.スジエビの甲殻類繁殖モデル生物としての有効性 飼育が容易で透明な甲殻を有する淡水産スジエビが、甲殻類の繁殖モデル生物として利用できるか否かを検討した。その結果、外見上の卵巣サイズが、卵巣の成熟度と一致することを、組織学的および生化学的に明らかとした。これにより、繁殖サイクルが短い(約20日)スジエビを殺すことなく容易に成熟発達段階を判定できることから、平成15年度はスジエビを甲殻類のモデル生物として、PG類およびアラキドン酸のスジエビの卵巣成熟促進効果を検討していく。 3.オゴノリのサンプリングとPG含有量および脂肪酸分析 平成14年3月から10月に毎月1回福井県三方郡美浜町丹生湾内で生息状況を調査した結果、3月から小さな藻体がみられ、4月には8月にかけて飼育実験に使用するのに十分な量の藻体が生息していることがわかった。しかし7月以降の高水温期には、藻体の表面に石灰藻や他の海藻が付着していることから、実験には4月から6月に採取したものを使用することとした。 オゴノリに含まれるPGE2含有量を液体クロマトグラフィーで、脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、PGE2含有量は7月に高く、PG類の前躯体であるアラキドン酸は5月に高くなる傾向を示した。
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