1)卵黄形成に伴う体液ビテロジェニン(VTG)濃度の変動 体液のVTGを雌エビの成熟度の指標として利用するには、卵巣発達に伴うそれらの変動を十分に理解しておく必要がある。卵巣の発達に伴う体液VTG濃度を前年度確立したELISA法で測定した。卵巣の成熟度は、卵巣の卵嚢内に占める卵黄蓄積卵細胞の割合を算出することで、卵黄形成期I-III期に分類することができた。体液VTG濃度は、前卵黄形成期では殆どの個体で検出限界であったが、卵黄形成I-III期では、いずれのステージにおいても平均3mg/mlであった。これより、卵黄形成に伴い体液VTG濃度は増加するが、卵黄形成期の間では体液VTG濃度に大きな変動は見られないことが明らかとなった。 2)液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC/MS/MS)によるプロスタグランジン(PG)測定系の確立 PG類の高感度測定が可能なLC/MS/MSを用いたPG測定法の確立を試みた結果、固相カートリッジによる前処理のみで、従来の測定法と同程度の測定感度をもつ測定系が確立できた。更に、PGF2αおよびPGR2に加えて、卵成熟に関与する可能性が高いPGD2の測定も可能となった。クルマエビの卵巣発達に伴う体液PG類を測定した結果、体液PGが卵黄形成および排卵・産卵の最終成熟に関与することが示唆された。これより、LC/MS/MSを用いたPG測定法が確立できたことで、RIを使用せず、より安全に測定できるようになり、さらには短時間で多数のサシプルの測定が可能となった。
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