研究概要 |
平成14年度では,PAM (Pulse Amplification modulation)式蛍光光度計(Water-PAM with Water-ED and Water-EDF : Waltz社)を用いた干潟における底生微小藻類の総基礎生産量の推定に関する基礎的研究を行った。つまり,酸素法および^<14>C法で測定した底生微小藻類の一次生産速度(炭素固定速度)とWater-PAMにより算出した相対的電子伝達速度(ETR)を比較し,それら2パラメータ間の相関関係を評価した。その結果,砂質干潟において,酸素法および^<14>C法から得られた一次生産速度とETR間には高い正相関が見られたが,一方,泥質干潟における底生微小藻類の一次生産速度に関しては両者間に明瞭な相関関係が得られなかった。これは,Water-PAMからの励起光が,泥質干潟の場合,底泥表層50〜100μm程度までしか透過しないため,それ以深に分布している底生微小藻類の光合成活性を評価できていないことが主な原因と考えられる(泥質干潟は運動性の底生珪藻が多く,また,砂質干潟と比較して,底泥中の光透過率が低い)。つまり,泥質干潟における底生微小藻類の一次生産速度推定のためにWater-PAMを用いるのは不適であると考えられる。砂質干潟において酸素法および^<14>C法で測定した底生微小藻類の一次生産速度とWater-PAMから算出したETRを一次の関数として係数を求め(一次生産速度=係数×ETR),その係数と現場(愛知県一色干潟)で測定したETR値を用いて,一次生産速度を算出した。その結果,それら2パラメータ間には高い正相関(r=0.79)がみられた。次年度は,時空間的に観測範囲を広げ,より多くのデータを収集することにより,励起蛍光法による一次生産速度推定の妥当性を評価すると共にその推定精度を上げたいと考えている。
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