ハクジラ類における鳴音の個体群変異を明らかにすることを目的として、北海道室蘭市沖、千葉県銚子市沖、東京都小笠原諸島父島周辺海域、和歌山県勝浦市沖において鳴音調査を行った。今年度も天候に恵まれず、十分な調査を行うことはできなかったが、昨年度までに蓄積したデータにハンドウイルカ、シャチ、コビレゴンドウ、マッコウクジラの鳴音データを加えることができた。 ハクジラ類の鳴音の個体群間比較と個体群に特徴的なパラメーターの検討においては、データ数の豊富なハンドウイルカとコビレゴンドウを対象に解析を行った。両種とも鳴音に個体群間で差があることはわかったが、特徴的なパラメーターを検出するには至らなかった。 行動ごとに鳴音が異なるようであれば鳴音の個体群比較を行う際に特定の行動に関連した鳴音のみを解析に用いる必要性が生じるため、バンドウイルカを対象として行動と鳴音の関連性を調べた。その結果、ホイッスルと呼ばれる鳴音については、特殊な状況下を除いて、行動によって音響特性が影響を受けないことがわかった。よって鳴音によってハンドウイルカの個体群判別を行う際には、ホイッスルを指標とすることが望ましいと思われた。 上記の結果を踏まえて、数値解析プログラムMATLABを用いて鳴音判別プログラムのプロトタイプを作成した。 これまでの研究成果について、Conference on the Biology of Marine Mammals、日本水産学会において発表を行った。
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