平成14年度の計画どおり、資源管理のための個体群動態モデルを構築した。ここでは、スケトウダラを対象にして、水温環境の影響や齢構成を考慮した複雑な個体群動態モデルと、環境変動を単に確率性として取り込んだ単純なモデルを構築し、予測のパフォーマンスの観点から両者を比較した。この結果、通常の限られたデータに対して、生物学的には明らかに単純すぎると思われるようなモデルが良いモデルであることが明らかになった。これは、データが限られている場合、統計的にはパラメータの多いモデルの予測パフォーマンスが悪いためである。より詳細なモデルによって生態系のミニチュアを作れば、管理や予測がうまくいくわけでない。目的に対して本質となるプロセスを調査研究によって明らかにしていき、適切なレベルのモデルを探す努力が大切であることが示唆された。また、リスク論的な個体群管理に関する研究として、絶滅リスクに関する総説を執筆した。ここでは、絶滅リスクの推定、管理への応用法、エンドポイント選択の重要性などについて解説した。さらに、環境の変動性が、資源競争する動物の分布に与える影響を数理的に解析した。資源の変動パターンによって異なる予測が得られることが明らかになり、不確実性や変動性に関する知見が動物の分布に大きな影響を与えることが明らかになった。このことは、変動環境下における資源分布、資源量指数の妥当性など、基礎から応用まで幅広く影響力をもつ知見である。
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