本研究では、ホタテガイ閉殻筋を対象として、本組織を構成する横紋筋および平滑筋の筋原線維形成機構を分子レベルで解明することを目的とした。本年度は、ホタテガイ閉殻筋を構成する主な筋原線維タンパク質であるtwitchinおよびαアクチニンの単離精製および一次構造の解析を行った。 1.twitchinの一次構造および生化学的性状の解析 ホタテガイ横紋筋および平滑筋からイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィーによりtwitchinを精製した。ホタテガイtwitchinはSDS-PAGEでの移動度から、分子量はともに約50万と推定された。また、3'および5'RACE法を用いたcDNAクローニングを行い、twitchinの一次構造解析を試みた結果、twitchin遺伝子の約3分の1にあたる約5kbpの領域が決定された。決定領域については、横紋筋および平滑筋twitchinの一次構造に差は認められなかった。演繹アミノ酸配列からモチーフ構造を予測したところ、既報の他生物種twitchinの構造と高い相同性を示した。 2.αアクチニンの精製と生化学的性状の解析 ホタテガイαアクチニンの精製方法はまだ確立されていないために、まずその方法の検討を行った。既報の脊椎動物筋肉αアクチニンの精製方法を参考にして、ホタテガイ横紋筋および平滑筋から精製を試みた。その結果、筋肉タンパク質抽出液を、DEAE-5PWを用いたイオン交換クロマトグラフィーに供することによって、αアクチニンが単一成分として得られた。本標品のSDS-PAGEでの移動度から、ホタテガイ横紋筋および平滑筋αアクチニンの分子量はともに約10万であることが分かった。以上の結果、ホタテガイαアクチニンの精製法が確立された。
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