本研究では、ホタテガイ閉殻筋を対象として、本組織を構成する横紋筋および平滑筋の筋原線維形成機構を分子レベルで解明することを目的とした。本年度は、ホタテガイ閉殻筋を構成する主な筋原線維タンパク質であるパラミオシン、twitchinおよびαアクチニンの生化学的性状を解析した。 1.フィラメント形成能の検討 ホタテガイ横紋筋および平滑筋パラミオシンの一次構造をcDNAクローニングにより行った結果、横紋筋からは5種類のcDNAクローン、平滑筋からは1種類のcDNAクローンが得られた。横紋筋パラミオシンは、選択的スプライシングによって5種類のアイソフォームが発現していることが示唆され、N末端領域は共通の配列を有することから、この領域が筋原線維形成に関与している可能性が示された。 2.twitchinと相互作用するタンパク質の探索 コネクチン/タイチンがαアクチニンと相互作用することから、twitchinもαアクチニンと相互作用する可能性が高いと考え、まずホタテガイ閉殻筋からαアクチニンを精製し、部分一次構造を解析した。その結果、3つのペプチド断片からアミノ酸配列が得られ、多生物種αアクチニンの一次構造と高い相同性を示したことから、ホタテガイαアクチニンが多生物種αアクチニンと似た性質を有することが示唆された。また、twitchinについて同様に内部一次構造を解析したところ、既報のtwitchinの一次構造と高い相同性を示したことから、ホタテガイtwitchinも多生物種twitchinと似た性質を有することが示唆された。したがって、αアクチニンとtwitchinが相互作用する可能性が高いと考えられた。
|