研究概要 |
日本の入会とスリランカのベトマの慣行が成立してきた要因を過去の関連研究,統計などから整理を行った.こうした制度が存在してきた背景として,どちらも農業生産の不確実性があげられ,また制度が変容してきた共通要因として,経済状況の変化があげられる. 地域共有資源管理制度が成立するための理論仮説の構築を試みた.スリランカのベトマについては,乾季の溜池から生じるレントを農民間で分配する制度として,ベトマの存在意義があることが示された.またスリランカで急速に普及する地下水灌漑は,このレントの消失を早め,ベトマの伝統的慣行の変容が加速化されることが示唆された. 入会とベトマの変容について,ゲーム理論を援用することで,制度が進化する可能性を考察した.農業生産の不確実性などから,どちらの制度も最低水準の生活を保障する相互扶助メカニズムが,歴史的経路に依存しながら人々の試行錯誤の結果として,社会的に進化的安定性を持っていたことが示唆された.この歴史的な制約を緩める要因として,ベトマのケースでは地下水灌漑の普及があげられ,入会については,経済環境の変化とともに法整備の近代化が考えられた. 15年度の調査に向けて,日本のベトマについては,山形県庁と山形県林業家からの聞き取り調査を行うとともに,林野庁の資料室などで統計データの整理を行った.H15年度の入会の調査には,当初予定されていた群馬県や和歌山県ではなく,山形県で実施する方向で検討することとした.スリランカのH15年の調査については,ポロンナルワ県とともにアヌラダプラ県も含めたなかから60村ほどの村落を選定することとした.
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