平成15年度の本研究は、昨年度からの計画に基づいて、引き続き農家調査によるデータ収集を中心におこなった。具体的には、ヴェトナム国イエンバイ省での現地調査(平成15年8月6日から同8月21日)と同ソンラー省での現地調査(平成15年12月5日〜同12月20日)の計2回を実施した。今回収集したデータは、現在、集計・分析中であり、昨年度の調査結果とあわせて、今後詳細に解析する予定である。 本研究の中心的課題は、北部中山間地域における持続可能なファーミングシステムの形態を事例的に明らかにすることである。さらに農家所得の向上という観点に沿えば、農畜産物市場の性格を把握することも必要である。そこで、紅河デルタ地域との比較によって北部中山間地域の特質を明確にする目的で、今年度はハノイ近郊における農業経営(養豚経営)の集約化の実態並びに豚肉流通の現状とその問題点を検討した。その結果、明らかになった点は以下のとおりである。 第1に、ハノイ近郊では養豚経営の規模拡大が進んでおり、経営間の規模格差も大きくなりつつある。第2に、養豚経営の規模拡大は改良品種の導入と安定供給並びに購入配合飼料の普及が大きな要因である。第3に、養豚経営の規模拡大の一方で、大規模経営の収益性は必ずしも高くない。全般的には依然として低位な経営の技術構造と飼養管理技術の未熟が原因である。第4に、個別養豚経営の規模拡大に対して、豚肉流通組織の構造の再編が遅れている。そのことが、大規模経営の生産及び出荷のリスクを大きくさせ、いっそうの規模拡大の制約となっている。
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