(1)微傾斜・起伏を伴う中間地の農業は農業用水の確保の困難性から土壌の肥沃性に乏しく、稲作及び飼料作物の生産性・収益性ともにきわめて低い。そのため圃場条件の改善や換金作物の導入に意欲をもつ経営者とそうでない経営者の差異によって、比較的所得の高い農家層と貧困農家層の格差はデルタ地帯以上に拡大している。ここで持続的農業を成立させるには、とりわけ水利条件の改善と、耕種と畜産の結合による農業経営複合化、合理的な作物選択と作付順序の導入が必要であるが、そのためには農外からの資金調達と的確な技術普及が不可欠である。一定の農外就業を行い自家農業への若干の投資を可能にし、さらに困難な農業労働を負担できる強靭な家族労働力の存在いかんが、当面、農家経済を維持し持続的経営を成立させるための条件である。 (2)山間地農業は、いっそう条件の厳しい傾斜地に立地し、生産の土地条件及び市場との交易条件もきわめて劣悪である。次第に向上してきた流通条件のもとで、域外からの農産物移入が増加傾向にある山間地域では、個別経営の複合化による農業の持続的成長は強く制約されており、地域複合の方向を探ることが当面の課題である。本研究では、ある山間地域における一集落の調査を行い、少数の養豚経営の存在を核として周辺農家が飼料供給の役割を担い、資源循環を図りつつ地域農業の維持を行う事例を明らかにしている。
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