前年度の研究では茨城県つくば市N集落における調査により、空間管理が粗放化している土地の所有構造と粗放化経緯を明らかにした。 本年度においては、不法投棄件数が全国1位であった千葉県の中でも、市街地に3方を囲まれ、交通の便が良い市街化調整区域が広がる沼南町T集落を調査対象地とすることとした。つくば市N集落がつくば学園都市という独立した計画都市の近郊地域であるのに対して、東京の連担市街地の外延部に位置するという条件の違いがある。また、つくば市N集落には見られなかった産業廃棄物処理業を専門的に営む事業者による粗放化が顕著に見られた。 まず現地踏査による集落の土地の利用と管理を明らかにした。さらに粗放化した土地について法務局における登記簿調査を行い、その所有の変遷を明らかにした。最後に地域住民に対するヒアリング調査を行い、所有の変遷に伴う事情と管理者の属性を経年的に明らかにした。つくば市N集落と異なり、元々の所有が外部であったという地片は少なく、当該集落居住者が外部の者に転売した事例が多く見られた。その理由としては、家の新築や相続の他に、事業に失敗する等急激な経済的困窮して外部の者に渡るもしくは貸す事例が数多く見られた。土建業等2次産業、農産物卸し売り・運搬業等3次産業による土地の活用や流動化が粗放化の要因となっていることが確認された。さらに前年度に示した粗放化に関わる土地粗放化類型を精査し改良を加えることができた。
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