研究概要 |
衛星画像などにより稲作支援を実施する場合,水稲がどこに作付けされたかを高精度に把握する基盤技術が必要である.従来,衛星画像を利用した水稲作付け領域の把握では,高精度化に高分解能衛星画像が必須であると考えられてきた.しかし,経済性や観測機会の面から現時点では実利用化が困難である.そこで,本研究では,画像価格が安価な衛星画像と圃場一筆を識別する圃場区画ベクトルデータを用いた水稲作付け圃場の高精度把握手法(圃場区画参照方式)を提案した.これまで,地上分解能30mクラスの多くの衛星画像に圃場区画参照方式が適用可能であることを示した.更に,天候に左右されずデータ取得可能なレーダ衛星画像に対して,圃場区画参照方式を適用する場合の問題点の解決に取り組み,従来,局所領域で実施されていたスペックルノイズ低減処理の空間規模を圃場一筆にすることで,判別対象となる水稲作付け圃場周辺地物情報を誤って取り込む可能性を低下させる手法を提案した.この手法を本研究のテストサイトの水稲移植期と移植後1ヶ月を観測した2時期のレーダ衛星画像に適用し,水稲作付け圃場区画分布の把握を試みた.レーダ衛星画像により把握した水稲作付け圃場区画の空間分布とレーダ衛星画像と同年時に観測された高分解能衛星画像の目視判読結果と比較したところ,テストサイトにおいてはレーダ衛星画像を用いることで8割の水稲作付け圃場区画を正確に把握することができた.また,残り2割の圃場区画は,レーダ観測時のレーダ照射方向と圃場区画長手方向の幾何学的な位置関係により,水稲移植期の湛水状態が把握不能であるものと推測され提案手法に起因するものではないという知見を得た.本研究成果により,衛星画像による水稲作付面積および分布の把握は実用段階に大きく前進し,衛星画像による稲作支援システムの基盤技術は概ね確立したと考える.
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