土の凍結面近傍におけるクラスレート・ハイドレート生成機構に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14760156
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学部, 助手 (10335151)
• キーワード: ハイドレート / 新エネルギー / 資源循環 / 土壌環境 / 凍土・凍上 / アイスレンズ / 地球温暖化ガス / ガラスビーズ

研究概要

本年度は、凍結過程にある土中のクラスレート・ハイドレートの生成過程を明らかにする目的で、装置の開発および、各種実験を行った。まず、既存の一方向凍結装置(横型)の温度制御部を改良し、実験精度を高めた。また、新たに簡易式の一方向凍結装置(縦型)を作成した。これらの装置を用い、異なる塩種・濃度で飽和した様々なガラス粉体中のTHFハイドレート生成過程を微視的に連続観察したところ、以下の知見を得た。(1)一方向凍結下にある粉体中には、粉体をほとんど含まない、レンズ状の純粋なハイドレート(ハイドレートレンズ)が析出・成長する。(2)ハイドレートレンズの析出条件は粒径、含水比、塩濃度にそれぞれ依存する。こうした析出条件はアイスレンズのものと異なるが、これはハイドレートと氷の表面張力、粘性、ハマーカー常数などの違いによると考えられる。(3)アイスレンズ同様、ハイドレートレンズの成長速度も塩濃度の増加に伴い遅くなる。また、その形は塩濃度の増加によって、平滑なレンズ状、歪んだレンズ状、樹枝状、間隙氷状と異なる。(4)ハイドレートレンズの成長速度は成長面の過冷却度に比例する。このときの比例係数はアイスレンズの場合の比例係数と数10倍異なるが、これは成長面近傍の不凍水の拡散係数の違いに依存すると考えられる。
以上の知見とその塩濃度依存性の一部は学会に発表しており、現在はいくつかの雑誌に投稿準備中である。次年度は、アイスレンズとハイドレートレンズの同時成長過程に着目した実験を行う一方、微生物を温度モニターに用いた凍結実験を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] K.unio Watanabe, H.Kiyosawa, K.Fukumura, T.Ezaki, M.Mizoguchi: "Spatial and temporal variation in thaw depth in Siberian tundra near Tiksi"Permafrost. (In press). (2003)
• [文献書誌] Kunio Watanabe: "Relationship between growth rate and supercooling in the formation of ice lenses in a glass powder"Journal of Crystal Growth. 237-9・3. 2194-2198 (2002)
• [文献書誌] Kunio Watanabe, Masaru Mizoguchi: "Amount of unfrozen water in frozen porous media saturated with solution"Cold Regions Science and Technology. 34・2. 103-110 (2002)
• [文献書誌] 中西 秀文, 渡辺 晋生: "凍結しつつある多孔質体中の窒素化合物の移動について"三重大学生物資源学部卒業論文. 40 (2003)
• [文献書誌] 横川 公亮, 渡辺 晋生: "多孔質体中におけるハイドレート形成の塩濃度依存性"三重大学生物資源学部卒業論文. 40 (2003)
• [文献書誌] 渡辺 晋生: "粉体中のクラスレートハイドレートの観察"農業土木学会大会講演会講演要旨集. 356-357 (2002)