土地利用区分のために検討すべき要因を探索するために、棚田が立地する長野県飯山市の複数地区の集落協定代表者の方を対象に、農地の有する基盤条件、地形条件、経営条件と土地利用の関係、および集落協定対象地を設定する際に重視した要因についてヒアリング調査を行った。その結果、基盤条件において整備済みか否かが最も大きな要因となっていることが確認できた。関連して、傾斜、あるいは団地としてのまとまりなどの地形条件についても基盤条件と関係する要因として重要な要因であると判断された。傾斜が比較的緩やかな地区で、同様の整備水準にある地区を比較した場合には、農業的利用に特化している地区とビオトープや遊歩道など農地の有する多面的機能をより発揮させるような利用形態が志向されている地区など土地利用の目指す方向の違いが観察された。それら違いには、経営的な要因よりも、むしろ集落のもつ歴史やビジョン、あるいは、構造改善事業などへのそれまでの取り組みの度合いが大きく影響していると考えられた。一方、急傾斜地帯では地形的な要因に加え、高齢化など経営的な要因により耕作放棄が著しく進展していることがヒアリングより確認された。急傾斜地帯は緩傾斜地帯と異なり、農地利用の限界、転用の困難さがあることから、農地利用の将来予測は、農地利用の再編を図る上で有益な情報になると考えられた。以上の知見を基に空間解析を行うため、空間データのデータベース構築が進んでいる茨城県を例にとって、土地利用とDEMから検出される地形的な特徴の関係の解析を試みた。その結果、土地利用は、おおよそ台地、丘陵地、低地などの地形条件に規定されるが、同様の地形条件であっても異なる土地利用が観察されることから、その場合には、経営的な要因が影響しているものと考えられた。経営条件の把握については遅れているが、先行してマイクロシミュレーションのプログラム作成を進めた。
|