農地土壌内で生じるプレファレンシャル流に及ぼす人為的活動の影響評価

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14760160
• 研究機関: 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
• 研究代表者: 宮本 輝仁 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 九州沖縄農業研究センター・環境資源研究部, 主任研究官 (40343983)
• キーワード: プレファレンシャル流 / 浸透現象 / Time Domain Reflectometry (TDR) / 黒ボク土 / 営農形態

研究概要

本年度は、プレファレンシャル流の発生が確認された牧草畑を対象に、給水条件が異なる場合の特徴的な浸透形態の把握を行なうこと及び、土壌断面内の経時的な土壌水分・EC分布計測に向けた多点自動計測システムの構築を目的として研究を実施した。
圃場実験は九州沖縄農業研究センター内の牧草畑で行なった。深さ、幅ともに1mの範囲の土壌断面が観察できるように観測孔を掘り、グリッド間隔0.1mで領域分割した。グリッド交点を測定位置としてTDRで初期状態の水分量と土壌ECの分布を測定した。TDR測定終了後、トレーサの散布を行なった。土壌断面より約5cm離れた1m×0.6mの区画内に、ブリリアントブルーFCFを2.5g L^<-1>とCaCl_2・H_2Oを7.35g L^<-1>添加して調整した溶液をトレーサとして散布した。80Lの溶液を湛水と散水の2種類で給水し、給水条件の違いによる浸透形態の把握とTDRによる水分量と土壌ECの分布測定を行なった。給水終了後、試験区画の中心線に沿った土壌断面が観察できるように土壌断面を掘り、浸透形態の把握とTDRによる水分量と土壌ECの分布測定を再度行なった。
湛水条件下では試験枠の一部に生じた亀裂部分を伝わり、1mより深いところまで達するプレファレンシャル流が起こった。この流れにより湛水が消失するまでの間、トレーサ散布域内の土層を全体的に浸透したこと、これに対して、散水条件下ではトレーサ散布域内の浸透は局所的に生じたことが明らかとなった。また、TDR測定対象とした土壌断面内のECの深度分布から、散水条件下でプレファレンシャル流が生じた場合でも、断面平均で溶質移動過程を観察すると正規分布に近い分布が形成される様子も確認された。
1m×1mの土壌断面内にTDRプローブを10本ずつ、7深度に計70本設置し、PC制御による土壌水分・EC分布計測を行なうシステムを構築した。土壌掘削部は埋め戻し、土壌表面状態が周囲と同様になるよう修復した。

研究成果

• [文献書誌] T.Miyamoto: "Spatial and Temporal Distribution of Soil Water Content in Fields under Different Vegetation Conditions Based on TDR Measurements"Japanese Agricultural Research Quarterly. 37・4. 243-248 (2003)
• [文献書誌] T.Miyamoto: "Dielectric coated water content reflectrometer for improved monitoring of near surface soil moisture in heavy fertilized paddy field"Agricultural Water Water Management. 64. 161-168 (2003)
• [文献書誌] 宮本輝仁: "TDR法による土壌水分計測"今月の農業. 48・2. 17-22 (2004)
• [文献書誌] 宮本輝仁: "TDRと色素を用いた黒ボク土畑における浸透形態の把握"農業土木学会大会講演要旨集. 260-261 (2003)
• [文献書誌] 宮本輝仁: "TDR法を用いた土壌水分・EC測定の火山性土への適用"第66回九州農業研究発表会発表要旨集. 25 (2003)
• [文献書誌] T.Miyamoto: "Aggregate structure effects on dielectric property of an Andisol"2003 American Society of Agronomy, Crop Science Society of America, Soil Science Society of America, Annual meetings Abstract. (2003)