研究概要 |
本年度は実験装置の製作と,コンポスト内部に蓄積される微生物反応生成物の定量・推定手法について検討を行った。生成物は主に微生物体細胞などの蛋白質から構成されると考えられるため,炭素源はデンプン,窒素源はアンモニアと仮定できる蛋白質を含まないコンポスト試料を調整して実験を行った。試料分析は,試料質量,含水率,pH,有機物含有量,総ケルダール窒素,アンモニア性窒素,硝酸性窒素とをそれぞれ測定し,総ケルダール窒素から無機態窒素を差し引いて有機態窒素(蛋白質)を求めた。微生物濃度は,細菌,放線菌,糸状菌をそれぞれ中温帯,高温帯とに区分し合計6分類として計測した。 試料温度は実験開始より46時間後に上昇を開始し,コンポスト化反応で特徴的とされるステップ状温度変化がみられた。排気酸素濃度は試料が昇温途中にある45〜50℃に達したとき,試料温度が最大のときに大きく低下し,明確な2つのピークが現れた。これらのことから,本実験では正常なコンポスト化が進行したとみなすことができた。有機態窒素の増加と生菌数の増加は全ての実験区で観察されたが,いずれもコンポスト化期間が3日間の実験区の増加量が最も多く,同5日間の実験区では同3日間のそれよりもやや少ない結果となった。また,微生物は中温性細菌と高温性細菌とが優先菌種となった。 コンポスト化による有機態窒素の増加分を生成物窒素とみなしたとき,生成物窒素は微生物菌数から推定可能であることが判明した。菌数が増加するにしたがって生成物窒素の増加量が小さくなるが,これは1菌体当たりの窒素量が少なくなるためと考えられる。今後は試料の含水率,温度変化(温度上昇速度,最高温度),コンポスト化期間などを変えたデータの集積を行い,生菌数増加と生成物窒素との関係についてさらなる検討を行う。
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