研究概要 |
蛋白質すなわち有機性窒素を含まない人工試料を用いた堆肥化により,生菌数と有機性窒素との関連について,特に材料温度と試料初期含水率の影響を検討した。温度は,55℃(以後55℃区と称す),60℃(同60℃区),65℃(同65℃区),70℃(同70℃区)とし,含水率は,50%w.b.(50%区)と65w.b.(65%区)により比較を行った。また,人工試料を用いた実験の後,乳牛ふんを用いて生菌数増加が有機物分解と窒素損失に及ぼす影響について検討を行った。 有機性窒素は,60℃区と65℃区が55℃区と70℃区よりもやや多く,材料温度が高い実験区ほど生菌数は減少する傾向があった。このため,単位生菌数当たりの有機性窒素量は材料温度が高い実験区ほど高く,堆肥化に関わる高温性微生物の至適温度は60℃付近にあるため,65℃区と70℃区では微生物の増殖活性が阻害されたためと思われた。また,試料中の有機性窒素量は50%区が65%区よりも多く,生菌数も同様であった。安定状態に達した後の単位生菌数当たりの有機性窒素量は,50%区が65%区よりも小さくなった。50%区では低含水率や塩類濃度の濃縮等で微生物活性が抑制されたためと考えられる。 乳牛ふんを60℃,70℃に維持して堆肥化を行った結果,60℃での堆肥化では,生菌数増加が70℃の場合よりも明らかに多く,また有機物分解が促進され,なおかつアンモニア揮散が低減され窒素損失が少なかった。堆肥化に関与する微生物の至適温度は60℃付近にあるとされ,60℃区では微生物数が多く有機物分解も多く,かつ微生物反応による生成物も多くなり,アンモニア生成量が減少したとみられる。このことより,堆肥化時の材料温度を60℃付近に維持することにより,高品質な堆肥の製造と環境負荷低減とが両立することが示された。
|