本研究の目的は、無極性ガスによる鮮度保持法を熱帯果実および花卉に応用することである。交付期間中(14年度-16年度)に特に、1.温度ストレスの軽減効果、2.無極性ガスが生体膜の変化に与える影響、3.低コスト化実現のための基礎調査、の3項目を検討する。 1.温度ストレスの軽減効果 沖縄では、台風によるキク苗への被害が多く報告されており、育苗関係においては急な需要に備えるための苗の長期保存が望まれている。そこで試料としてキク苗を用いた。ストレスの程度の指標としては、苗木のクロロフィル蛍光におけるFv/Fm、即ち光合成の量子収率を採用し、温度条件10℃で4日間の保存試験を行った。対照区のFv/Fmは時間の経過に伴って徐々に低下した。一方、無極性ガスであるキセノンを分圧2気圧で処理した試験区は、処理後急激にFv/Fmが低下し、試験後の処理終了後にFv/Fmが若干回復した。これはキセノンの働きを示すものと考えられ、今後はさらに高温でどのような効果が現れるかを明らかにする。 2.無極性ガスが生体膜の変化に与える影響 冷中性子および極冷中性子ラジオグラフィを用いて植物中の僅かな水分変化を測定する方法を確立した。この方法を用いることによって、組織の中を移動する水の様子を非破壊で観察することができ可能であるため、間接的に生体膜の状態を捉えることができると考えられる。
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