研究概要 |
1 中国FACEでの微気象観測と熱収支解析 中国江蘇省の水田地帯で実施中の開放系高CO_2(Free-Air CO_2 Enrichment, FACE)実験圃場において微気象観測を行った。現CO_2(対照)区と高CO_2(FACE)区の両区で,水稲移植後の7月始めから収穫の10月中旬まで,群落内外の日射(放射)環境,気温・湿度のプロファイル等の微気象環境を連続測定した。分げつ期,出穂期,登熟期に気孔抵抗を測定し,微気象要素やCO_2濃度に対する気孔の応答をサブモデル化した。さらに微気象データを,気孔応答サブモデルを組み込んだバルク2層熱収支モデルに適用し,高CO_2濃度が葉温や飽差に及ぼす影響を定量的に把握した。 2 昇温手法の整理 生態系を対象とする温暖化実験手法について文献検索し,熱収支的にみた昇温のメカニズムや,温度・湿度・土壌水分・風速等の群落微気象へのアーティファクト,適用する際の経済性・汎用性などについて整理した。 半閉鎖系手法である温度勾配型チャンバー(TGC)や温度制御型オープントップチャンバー(OTC)は,温度制御性に優れ,温室効果により群落全体を昇温可能であるが,湿度・風速・土壌水分等の他の環境条件へのアーティファクトが大きい。パッシブ制御型の温室やオープントップチャンバー・赤外線反射カバー等は,温度制御性は劣るが,安価で電力供給の困難なサイトにも有効であり,チャンバーやカバーの形状によってはアーティファクトをかなり抑えられる。温床線埋設や赤外線ランプは温度制御性もよく環境改変も少ないが,地表面の乾燥,植物体温と気温との差などの各手法特有の問題もあり,他の手法との併用や制御方法の検討が必要であることがわかった。 3 今後の展開 中国FACEにおける微気象データを基に数値モデルを構築し,各昇温手法による群落の微気象環境への影響に関するシミュレーションを開始する。
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