研究概要 |
1 中国FACEでの微気象観測の継続と微気象モデル構築 中国江蘇省の水田地帯で実施中の開放系高CO_2 (Free-Air CO_2 Enrichment, FACE)実験圃場において微気象観測を行った。気孔コンダクタンスや葉面積分布などの植物側のパラメータを決定し,既存の多層微気象モデル(吉本ら,2000)を改良した。現在の水稲群落にモデルを適用した結果,温湿度プロファイルや葉温分布などの微気象や熱収支構造を十分再現しうることを確かめた。 2 温暖化手法の数値実験 前年度に整理した代表的な各温暖化手法について,その昇温効果や他の環境条件へのアーティファクトについて数値実験を行い,手法間比較ならびに将来予測される温暖化状態(A)との定量的な比較を行った。赤外線ランプによる群落内の気温プロファイルは,予測される温暖化状態(A)に最も近かったが,群落上部において葉温・葉面飽差が過度に高く,群落の熱収支構造の変化も大きいため,それらが植物生理に少なからず影響を及ぼすことが推測された。風よけは,厳密には開放系装置でなく温度制御性能にも劣るが,群落内全体の気温・湿度,葉温を,(A)に近い状態でほぼ一様に上げることができた。温床線埋設では,地表面付近(10〜20cm)のみ昇温し地表面蒸発が増大した。放熱管を群落中層に設置すると,そこからの熱伝達と長波放射の増大のため,設置高さ付近の葉温が効率的に上昇し気温も上昇した。地温を効率的に上昇させるのは温床線方式のみであり,他の3手法は全て気温に比べ地温上昇が不十分であった。 3今後の展開 より高次の乱流拡散と大気安定度の効果を入れる等のモデルの改良を行い,昇温手法の実態に即した数値実験を行うと共に,水田生態系に適した温暖化システムの開発について具体的指針の提案を試みる。
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