研究概要 |
ZPCは鳥類の卵黄膜内層を構成するタンパクのひとつで,哺乳類の透明帯のZPCと相同なタンパクである。家禽の卵黄膜の形成機構と生理機能を明らかにするために,ZPCの翻訳後修飾およびその生理的役割を調べ,以下の結果を得た。 1.分泌前後のZPCの構造変化を調べることにより,ZPCは翻訳後にN結合糖鎖の付加とC末端側の77アミノ酸の除去を受けることを見い出した。切断部位はRFRRでこれはズブチロペプチダーゼの一種であるフューリンの認識配列であった。 2.この翻訳後修飾の生理的役割を調べる系を確立するために,ZPC遺伝子をCHO細胞に導入したところ,培養液と細胞可溶化物の両方で抗ZPC抗体と反応するバンドが検出され,ZPCをCHO細胞で発現させることに成功した。さらに特異的抗体,各種レクチンを用いた解析により,ウズラZPCはCHO細胞でもN結合糖鎖の付加およびC末端側のアミノ酸が除去を受けることが示され,生体内にきわめて近い翻訳後修飾を細胞株内で再現することに成功した。 3.site-directed mutagenesis法により作成したN結合糖鎖の付加部位に対する変異ZPCでは,N結合糖鎖を欠いたZPCが培養液中に検出されたが,これに対してフューリンの認識配列の変異ZPCでは,細胞に前駆体ZPCが蓄積し,培養液中にバンドは検出されなかった。これらの結果からウズラZPCはN結合糖鎖が付加されなくても細胞外に分泌されるが,フューリン認識配列で切断を受けないと細胞外に分泌されないことがわかった。
|