研究概要 |
ブタにおいて食肉処理場由来の卵巣から卵子を回収し,その卵子を体外成熟,体外受精させ移植可能な胚盤胞期までに発生させることは,遺伝子組み換えブタ作出のため必須の技術である.しかし,体外成熟卵子の発生能は体内成熟卵子に比較して著しく低いことから,本研究では高い発生能を有する成熟卵子の作出法に関する基礎的研究を行った.充分発達した卵胞内においてLH surgeにより卵子の減数分裂は再開し,成熟する.しかし,直径3-5mmの卵胞由来のCOCsの卵丘細胞にLH受容体(LHR)は発現していないことから,体外成熟培養時のLHの機能は不明である.そこで,卵子体外受精時におけるLHR発現の制御機構とその経時的変化についてRT-PCR法により検討した.その結果,FSHを添加した培地における培養12時間以降において機能性を有するLHR mRNAが発現し,培養20時間で発現量が最大値に達したが,培養24時間以降は細胞膜貫通部位が欠損したLHR mRNAのみが発現していた.この機能性を有するLHRをLHにより刺激した結果,卵丘細胞のcAMP量とprogesterone生産量の増加,および増殖の抑制,早期の卵子減数分裂再開が認められた.そこで,この新規に形成されるLHRをLHにより刺激することが卵子の発生能に及ぼす影響について検討した.その結果,FSHにIBMXを添加して20時間培養することにより卵子の減数分裂を停止させた条件で卵丘細胞にLHRを発現させ,そのLHRをLHで刺激する培養法により,供試した卵子の35%が体外受精後胚盤胞期にまで発達した.この発生率は,既存の培養法に比較して著しく高いことから,卵丘細胞に新規に形成されるLHRを刺激することが卵子成熟に重要であると考えられた.
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