本研究では、ラウス肉腫ウィルス(RSV)に対して感染抵抗性を示すニワトリの2系統(RSV非感受性01系統、腫瘍退行性11系統)について、CGメチル化感受性制限酵素Eag Iを用いたFluorescence Representational Genomic Profiling(FRGP)法によるゲノムディファレンシャル解析を行い、対照系統(RSV感受性MA系統)とのゲノム差異よりRSV感染抵批性に関して転写調節がなされている遺伝子を単離・同定することを目的としており、本年度は次のような実績を挙げた。 1.スポット#59隣接領域におけるゲノム解析 昨年度、RSV感染抵抗性2系統で低メチル化状態を示し、感受性MA系統で高メチル化状態を示す縦列反復配列の一部として単離したゲノム差異(スポット#59)の隣接領域の遺伝子探索を目的としてコスミド・ゲノムライブラリーをスクリーニングした。その結果、2つの陽性コスミドクローンが得られ、それぞれ10kb程度の塩基配列を決定したところ、上皮細胞成長抑制因子をコードする遺伝子をRSV感染抵抗性関連遺伝子として単離・同定した。さらに、当該遺伝子の5'側のメチル化状態についてHpa II-PCR法により解析したところ、MA系統、11系統、01系統の順でメチル化の程度が高いことが明らかとなった。 2.ゲノム差異のクローニングと塩基配列解析 スポット#59以外の系統特異的なゲノム差異のうち7つの変異スポットについてクローニングし、サザンブロット解析によりゲノムプロファイル上のゲノム差異を確認した後、塩基配列を決定して類似性解析を行った。その結果、T細胞受容体α(TCRalpha)遺伝子、ユビキチン加水分解酵素1(UBH1)遺伝子、プロリンリッチホメオボックスタンパク質(Prh)遺伝子をRSV感染抵抗性関連遺伝子候補として単離した。また、データベースの遺伝子配列と高い類似性が認められなかった4つの変異スポットのうち、1つはニワトリ散在型反復配列(CR1)であることが明らかとなった。
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