家畜のストレス発現を調節する脳内メカニズムの解明及びその人為的制御法の探索

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14760183
• 研究機関: (独)農業生物資源研究所
• 研究代表者: 作本 亮介 農業生物資源研究所, 生体機能研究グループ, 研究員 (20343999)
• キーワード: ブタ / 脳 / ストレス / 繁殖 / 神経内分泌 / サイトカイン / コルチゾール / 卵巣

研究概要

飼育管理上の様々なストレスは、繁殖機能や免疫機能の低下、異常行動を誘起し、家畜生産に大きな影響を与えている。本研究は、ストレスのブタ脳による認識制御機構ならびに免疫・繁殖機能への作用機構を解明することにより、新たなストレス軽減法や効率的な家畜生産法確立のための基礎的知見を提供することを目的とする。本年度は、1)脳へのアプローチ手法として前年度に開発した、in vivo無麻酔下での第三脳室カテーテル留置技術の改良、2)生体内で多様な生理作用を持ち、免疫反応に関与することの知られる腫瘍壊死因子がブタの脳機能調節に関与する可能性について検討し、以下の知見を得た。
(1)ブタ第三脳室に長期間カテーテルを留置する手法を改良・確立し、自由行動下のブタを用いて、第三脳室への生理活性物質投与試験が可能となった。
(2)ストレス反応に重要な役割を果たす副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの第三脳室への投与により、血中コルチゾール濃度の増大することが示された。
(3)腫瘍壊死因子が大脳辺縁系(扁桃体、海馬)、視床下部ならびに下垂体に存在することを遺伝子レベルならびにタンパクレベルで明らかにし、腫瘍壊死因子が脳の機能調節に関与することを示唆した。
これらの知見を元に次年度以降、ブタの中枢(大脳辺縁系・視床下部)ならびに末梢(卵巣・黄体)の機能調節におけるサイトカインとコルチゾールの役割を明らかにし、ストレス反応と繁殖機能、免疫機能との相互作用機構を解明するための研究を継続する。

研究成果

• [文献書誌] Ryosuke Sakumoto: "Central and peripheral concentrations of tumor necrosis factor-α in Chinese Meishan pigs stimulated with lipopolysaccharide"Journal of Animal Science. 81. 1274-1280 (2003)
• [文献書誌] Kiyoshi Okuda: "Multiple roles of TNF super family members in corpus luteum function"Reproductive Biology and Endocrinology (On-line Journal). 1. 95 (2003)
• [文献書誌] Ryosuke Sakumoto: "Tumor necrosis factor-α (TNF) inhibits progesterone and estradiol-17β production from cultured granulosa cells : Presence of TNF receptors in bovine granulosa and theca cells"Journal of Reproduction and Development. 49. 441-449 (2003)
• [文献書誌] Ryosuke Sakumoto: "Possible actions of tumor necrosis factor-α in ovarian function"Journal of Reproduction and Development. 50. 39-45 (2004)
• [文献書誌] Toshiyuki Saito: "Development of a stereotaxic instrument for study of the bovine central nervous system"Brain Research Bulletin. 62. 369-377 (2004)
• [文献書誌] Ryosuke Sakumoto: "A technique for long-term implantation of a microcatheter into the third ventricle of post-pubertal Chinese Meishan pigs based on ventriculography"Journal of Neuroscience Methods. 134(In press). (2004)