本研究はBabesia caballi感染症に対して本原虫の生活史を総合的に鑑み、ワクチン開発および実用化することを最終目的として行われている。本年度はその第一段階としてワクチンターゲットになりうるタンパク質のスクリーニング行った。そこで以下の研究成果が得られた。 1.B.caballi原虫に対する新規特異的モノクローナル抗体を10種類作製した。 2.それぞれのモノクローナル抗体を用いてB.caballi cDNAライブラリーから遺伝子クローニングを行った。それらクローニングされた遺伝子の塩基配列についてシークエンスを行い、すべての遺伝子配列を決定した。塩基配列決定後、遺伝子データーベースを用いて相同性検索を行ったところ、7種類のB.caballi原虫新規遺伝子が得られた。 3.これら7種類の新規遺伝子の内、ワクチンターゲットとしてのB.caballi分子量53kDa Protein Disulf-ide Isomerase(PDI)様タンパク質をコードする遺伝子を4.の理由からまず選別した。得られたPDI遺伝子を大腸菌およびバキュロウイルス発現用ベクターに組み込み、組換えタンパク質を発現させた。現在、B.caballiPDIの活性試験ならびにB.caballiにおけるPDIの機能解析を鋭意推進中である。 4.一般にPDIはタンパク質の酸化、還元、異性化などのチオール-ジスルフィド交換反応を触媒する構造形成因子の一つであり、その酵素活性以外に多くの機能が明らかにされた多機能タンパク質である。最近ではPDIのシャペロン機能が注目されている。他の原虫におけるPDIの働きは、宿主免疫からの回避機構としての表面抗原変異、細胞侵入時における接着因子の活性化などがある。さらに、抗原虫薬のターゲットタンパク質としても重要視されている。
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