研究概要 |
AML/MDSを特異的に発症させるネコ白血病ウイルス株(C-33)を、ネコに感染させてMDSモデル動物を作製しVK2の投与を行った。また、骨髄細胞の分化能を評価するために、コロニーフォーミングアッセイを行い、さらにアポトーシスの有無を解析するためにTUNEL法にて解析を行った。VK2の投与によって血球減少症の改善が認められた個体では、投与1ヶ月後にはCFU-EおよびCFU-GMの数が顕著に増加し、さらにアポトーシス陽性細胞が減少していることが認められた。また、Fas, Fas-LおよびTNF-aといったアポトーシス関連因子の関与を解析するためにm-RNAの発現を検討したところ、VK2の投与前および投与後ではこれら遺伝子の過剰発現は認められず、ネコのMDSのアポトーシスにはFasもしくはTNF-a以外の系が関与していることが考えられた。 さらに、臨床症例でAMLと診断された2例およびMDSと診断された6例について検討を行った。VK2投与を行ったMDS症例の6例中4例において、血球減少症の改善が認められ、うち3例はVK2投与単独投与でもその効果が認められた。また、AML症例の2例においては顕著な効果は認められなかった。従来のネコのMDの生存期間中央値は2.1ヶ月であったのに対し、VK2投与を行った個体群では5.5ヶ月であった。また、VK2投与を行った症例では治療経過中に明らかな白血病への進展は認められなかった。以上の結果から、ネコにおいてもMDSに対してVK2は有効な治療法であることが示唆された。また、MDSのモデル動物において、VK2は骨髄細胞に対して非常に強い分化成熟能を改善する効果を有することが証明され、さらにその効果はアポトーシス亢進状態を改善することが示唆された。
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