1、日本の統合失調症および気分障害症患者におけるボルナ病ウイルス(BDV)抗p10蛋白質に対する抗体の検出。 BDV感染と統合失調症および気分障害症の臨床症状の関連は明らかにされていない。したがって、慢性期統合失調症患者32人と気分障害患者33人におけるBDVp10蛋白質に対する血中抗体について、ウエスタンブロット法により解析を行った。その結果、陰性対照群では25人中1人(4.0%)、統合失調症患者群では32人中7人(21.9%)、気分障害症患者群では33人中9人(27.3%)が抗BDV-p10抗体陽性と判定された。陰性対照群に対し、統合失調症と同抗体保有の関連性は統計学的に有意ではなかったが、気分障害症との関連においては有意に高かった。一方、統合失調症の陽性型では、陰性型におけるよりも抗BDV-p10抗体検出頻度が高い傾向があった。また、気分障害症においては双極性障害におけるよりも単極性障害におけるほうが高い傾向があった。 2、BDV実験感染仔ラット哺乳母ラットのボルナ病発症の解析。 ラットにおいて病原性の異なるBDV-CRP3株およびCRNP5株を新生仔Lewisラツトに実験感染し、母ラットに哺乳させた。3週間後に仔ラットの発症あるいは離乳により母子を別々に飼育したところ、その4週間後、CRNP5株感染仔ラットを哺乳した母ラットのうち1頭が重篤な運動機能障害を示し、明らかな神経症状を呈した1週間以内に致死的な病態となった。この母ラットの脳から高力価のBDVが検出され、さらに脳の病理組織学的解析により、重度の脳炎病変ならびにBDVウイルス抗原が認められた。これらの結果より、同母ラットは実験感染した仔ラットを保育している間に何らかの経路でBDVに感染し、ボルナ病を発症したと考察される。現在、同様の条件で感染仔ラットを保育したF344母ラットの解析を行っている。
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