TCDDによる半数致死量(LD_<50>)は動物種ごとに大きく異なるが、これがAhRの潜在的転写能に依存するのか検討するため、数種の哺乳類AhRを同一のレポータージーンアッセイ上で試験し、ベンチマークドーズ(AhR-BMD)を測定した。 まず、CHO細胞を用いた系(レポーター:ヒトCYP1A1遺伝子5'上流1500bp)では、感受性の最も低いとされるハムスターではどの用量でも誘導性は見られなず、感受性の著しく異なるとされるマウスの2系統、C57BL/6JおよびDBA/2さらにウサギの3点でBMDは報告されているLD_<50>と相関を示した。しかし、最も感受性の高いモルモットでは776μMと高値であった。また、HeLa細胞を用いた系(レポーター:合成4xXRE-tk)では、AhR-BMDにおいて、ラット>DBA/2マウス>ハムスター>ウサギ>ヒト>モルモット>C57BL/6Jマウスの順に感受性が高く、AhRの潜在的転写活性能と消耗症候群によるLD_<50>との相関性は取れないことが判明した。 一方、上記の解析はリガンド非添加群の発現レベル(BA)を基準にしたものだが、このBAはCHP細胞で低BMDを示すDBA/2マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、ヒトにおいてはすでにC57BL/6Jマウスの最大誘導活性と同一レベルであった。このことはCYP1A1遺伝子の誘導にこれらのAhR分子はリガンド非存在化でも活性を保持していることを示している。C57BL/6Jマウス以外のAhRには共通するC-末端側のペプチト構造がある。そこでこの領域を欠損したDBA/2マウスの変異AhRを用いて同様の実験を行ったところ、BAの低下を示すことが明らかとなった。これはこの領域に、BAレベルを規定する調節機能があることを示している。
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