研究概要 |
日本,中国及び韓国より生薬インチンコウの基原植物であるカワラヨモギ及び同属植物である沖縄産リュウキュウヨモギ、ならびにその他の日本産・ヨーロッパ産Artemisia属植物数種を導入して栽培し,HPLCを用いて利胆成分であるジメチルエスクレチン(DME)及びカピラリシン(CAP)の定量,薬用部位である頭花の形態,葉緑体DNAのrpl16とPS-ID領域の塩基配列を比較した.塩基配列の決定は,rpl16とPS-ID領域をPCRにて増幅後,DNAシークエンサーにて行った.韓国産や中国産のカワラヨモギは,頭花や外部形態の特徴は日本産カワラヨモギと類似していたが,DMEやCAPはほとんど含有されていなかった.また,沖縄には,花の形態からリュウキュウヨモギおよび他のArtemisia属植物との雑種と思われる2タイプがみられるが,いずれもDMEやCAPを含まず生薬としては使用できないことが判明した.また,葉緑体DNAのrpl16とPS-ID領域の塩基配列情報を比較した結果,カワラヨモギ,リュウキュウヨモギ,ヨーロッパ産A.campestris,ヨモギ,オトコヨモギ及びハマヨモギそれぞれの特異的なDNA多型が確認でき,本配列を利用すれば,生薬中に混入したArtemisa属植物の鑑定が可能である.また,富山県高岡市の庄川河川敷,及び石川県手取川流域においてカワラヨモギとオトコヨモギの自然雑種が生育することを確認したので,自然雑種の頭花の形態調査,上記成分の定量及びDNA分析を行った。カワラヨモギとオトコヨモギの自然雑種では,DMEやCAPが殆ど含有されておらず,生薬として使用できないことを明らかにするとともに,RAPDを行うとカワラヨモギとオトコヨモギ及び自然雑種の2つのクラスターに分かれ,自然雑種はオトコヨモギの形質に近いことが明らかとなった.
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