研究課題
Aeropyrum pernixは至適増殖温度90-95℃の好気性超好熱古細菌であり、海洋熱水環境に生息する。本菌の全ゲノム塩基配列解読はすでに完了している。我々はポストゲノム研究の一環として、本菌のゲノム情報資源からの有用遺伝子の開発を進めている。本研究では、遺伝子工学、臨床検査、比較ゲノム解析等のツールとして多用される制限酵素を探索した。A.pernix K1株細胞より得た粗抽出液から、Cibacron Blue、Heparin、SP-Sepharose、Superdex 200の各カラムを用いて分子量約40,000の制限酵素を精製した。精製サンプルをSDS-PAGE分析に供した結果、43,000のサイズの単一バンドを確認し、これを制限酵素ApeKIと名付けた。ApeKIの至適活性温度は90℃であった。ApeKIは活性にMg^<2+>を要求するが、ATPやS-アデノシルメチオニンは活性発現に必須でないことからII型制限酵素であることが示唆された。またApeKIは100mM程度のNa^+またはK^+の存在下で活性が高く、低塩濃度条件下ではStar活性が認められた。ApeKIは5塩基対の回文配列5'-G↓CWGC-3'(↓は切断部位,W=AまたはT)を認識し、3塩基の5'突出末端を生成して切断した。ApeKIと同じ塩基配列を認識する制限酵素としては既にBacillus brevis由来のBbvIが報告されているが両者は切断部位が異なるため、ApeKIはBbvIのネオシゾマーであると結論づけた。ApeKIのN末端アミノ酸配列分析の結果をゲノム配列データにあてた結果、APE558という機能未知ORFがApeKI遺伝子であると同定できた。APE558産物を大腸菌T7発現系により大量発現させ、その精製サンプルを調製して活性を検討したところ、上記の制限酵素と同じ活性を有することが確認された。また、バイオインフォマティックスと無細胞蛋白質合成系を用いたハイスループットでの制限酵素遺伝子同定法を確立し、A.pernix K1ゲノム上にApeKIのほかにも少なくとも4個の制限酵素がコードされていることを明らかにした。
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