研究概要 |
ホウレンソウおよびタバコの葉、茎、根の各組織を用いて、栽培条件および光、乾燥、温度などの環境因子が2つの葉緑体型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)アイソザイム(ストロマ型およびチラコイド膜結合型;sAPX, tAPX)に及ぼす影響をS1ヌクレアーゼ・プロテクション分析によるmRNA量および、モノクローナル抗体を用いたイムノブロット解析によりタンパク質レベルで検討した。その結果、葉緑体型APXmRNAの総発現量は、各組織および環境要因の違いによる差は認められなかったが、各組織間、特に葉と根において3種類のsAPX(sAPX-I, -II, -III)および1種類のtAPX(tAPX-I)mRNA発現量に顕著な差が認められた。sAPX-I, -II, -IIIおよびtAPX-Iの発現量は、葉ではそれぞれ20:5:32:42に対して根では20:5:75:5であり、sAPX-IIIとtAPX-Iの間で発現量が顕著に変化していた。非光合成細胞のタバコBY-2懸濁培養細胞の葉緑体型APXもsAPX活性のみが認められ、根におけるsAPX発現率を支持していた(Physlol. Plant,2003, in press)。葉緑体型APX遺伝子の選択的スプライシングに関与するシス配列を同定するため、塩基配列間のアライメントから得られたシス配列の候補領域(イントロン12)を対象に変異を導入後、T7RNAポリメラーゼを用いてin vitroでmRNAを合成し、ホウレンソウおよびタバコの各組織の核タンパク質に対して、変異を導入したmRNAに対する結合能をRNA-タンパク質ゲルシフト法により解析した結果、目的の領域が選択的スプライシングのためのシス領域であることを特定した。
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