研究概要 |
前年度、ホウレンソウおよびタバコの葉、茎、根の各組織を用いて、栽培条件および光、乾燥、温度などの環境因子が2つの葉緑体型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)アイソザイム(ストロマ型およびチラコイド膜結合型;sAPX,tAPX)に及ぼす影響をS1ヌクレアーゼ・プロテクション分析によるiRNA量および、モノクローナル抗体を用いたイムノブロット解析によりタンパク質レベルについて検討した。その結果、光合成組織および非光合成組織において4種類の葉緑体型APXmRNAのうちsAPX-IIIとtAPX-I間で発現量に組織特異性が認められ、その制御は、選択的スプライシングに関与するシス領域(SRE配列)にあることを特定してきた。今年度は、選択的スプライシングに関与するトランス因子同定を試みるための植物培養細胞によるモデル実験系の開発を試みた。ホウレンソウ葉緑体型APX遺伝子(APXII)より、SRE配列を含むミニ遺伝子をバイナリーベクターpBI121を用いて構築した。モデル実験系としは、遺伝情報の豊富なシロイヌナズナ由来T87細胞を対象にした。ゲノム情報より、シロイヌナズナ葉緑体型APXはパラログ遺伝子として存在することが明らかであるが、シロイヌナズナがSRE配列に相互作用するタンパク質因子を発現しているか否かを、ミニ遺伝子を導入しスプライシングパターンをRT-PCRで比較することで検討した。その結果、シロイヌナズナにおいてもホウレンソウで見られるスプライシングパターンが得られることから、シロイヌナズナはSRE配列に相互作用可能なトランス因子解析のためのモデルとして利用可能であることが明らかになった。
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