本研究の目的は、水チャネル、アクアポリン2(AQP2)の細胞内と頂部細胞膜との間の細胞内移送について、その経路および調節機構を明らかにすることにある。研究を進めるにあたっては、AQP2を特異的に認識する抗体を得ることが必要である。そこでまず、ラットAQP2の部分ペプチドを合成し、ウサギとモルモットに免疫して、特異抗体の作製を試みた。ラット腎臓組織を用いた免疫組織化学により、抗体は、集合管主細胞の細胞質および頂部細胞膜を染めることがわかった。ラット腎臓のホモジネートを用いたイムノブロット解析の結果と合わせて、抗体はAQP2を特異的に認識することが確認できた。この抗体を用いて、本年度は主にラット腎臓集合管におけるAQP2の細胞内局在を詳細に検討した。AQP2は抗利尿ホルモンの作用により、細胞内から頂部細胞膜へ移行することが知られている。そこで、種々の細胞小器官に対する抗体を用いて、AQP2との蛍光二重染色をおこない、AQP2が分布する細胞内コンパートメントの検討をおこなった。用いた抗体は、抗calnexin抗体(小胞体)、抗Golgi 58K抗体(ゴルジ装置)、抗TGN38抗体、抗cathepsin D抗体(ライソソーム)、抗lgp-110抗体(ライソソーム)、抗EEA1抗体(初期エンドソーム)、および抗caveolin1抗体(カベオラ)である。EEA1以外はAQp2と異なる局在を示した。細胞内のAQP2の一部がEEA1と共局在した。ラットに抗利尿ホルモンを投与したところ、頂部細胞膜のAQP2が増加し、細胞内のAQP2は減少したが、やはり一部はEEA1陽性コンパートメントにとどまっていた。これらの結果から、AQP2の細胞内移送には、初期エンドソームが関与することが示唆された。今後、培養細胞で細胞内移送経路を検討するうえでの有用な知見である。
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