本研究の目的は、水チャネル、アクアポリン2(AQP2)の細胞内と頂部細胞膜との間の細胞内移送について、その経路および調節機構を明らかにすることにある。15年度はヒトAQP2のcDNAを腎臓上皮由来のMDCK培養細胞に導入し、培養細胞系での解析を試みた。 以前に作製したラットAQP2に対する抗体が、MDCK細胞に導入したヒトAQP2を特異的に認職することを確認するために、イムノブロット解析と免疫染色をおこなった。イムノブロットではヒトAQP2の分子量に一致するバンドが得られ、抗原ペプチドの添加によりバンドは消えた。免疫染色では細胞内にシグナルを認め、抗原ペプチドの添加によりシグナルは消えた。これらのことからMDCK細胞にヒトAQP2が導入・発現され、抗体が特異的に認識することが確認できた。したがって、この細胞と抗体を用いてAQP2の細胞内移送経路に関する研究を培養細胞系でおこなうことができると判断した。 AQP2は生体内では抗利尿ホルモンであるバソプレッシンがバソプレッシン受容体に作用して細胞内から頂部細胞膜へ移行する。MDCK細胞ではバソプレッシン受容体の発現がみられないために、バソプレッシンのシグナル伝達系であるcAMP系を賦活化するフォースコリンを用いてAQP2の移送系を刺激した。AQP2は刺激前には細胞内に分布していたが、50μMのフォースコリンで30分間刺激すると細胞内から頂部細胞膜へと移行した。さらにフォースコリンを除去すると再び細胞内に移行することが確認された。 現在この培養細胞系を用いて、AQP2が細胞内に分布するコンパートメントと、頂部細胞膜へと移行し、再び細胞内コンパートメントへと戻る際の詳細な経路を検討しているところである。 また、15年度はアクアポリンのほかのアイソフォームであるアクアポリン5について、ラットの消化器系における分布局在を検討し、論文に発表した。
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